久しぶりに炊飯器で米を炊いた。
いつも米を食べる時は、ラップにくるんで冷凍保存しているものをチンして食べている。
だからか、ごはん時に米を炊いて食べるのはずいぶんと久しぶりな感じがした。
米を研いで炊飯器にセットする。せっかちな俺はいつも早炊きだ。当たり前のようにその時も早炊きにしようとスイッチに手を掛けた。
ふとスイッチ類をよく見ると、普通の炊飯ボタンの他に「熟成炊き」というものがあった。こんなのあったかなと試しに押してみる。
どうやら炊きあがるのに「75分」もかかるらしい。
うちの炊飯器は普通の炊飯がだいたい50分近くで早炊きは35分くらい。1時間以上かかる炊飯なんて未知の領域だ。どれ試したくなる。
「75分」という未だ自分が味わったことの無い時間を楽しみに待つ間、近所のスーパーへとんかつを買いに行く。
前日に食べたカツカレーが信じられないほど美味しくなかったことの慰め、いや、これはもはやリベンジか。とにかくマックスバリュのとんかつは案外うまくて、安い。
ひとしきり買い物をし終えたあと家に戻ると、いよいよ残り時間もあと僅かとなっていた。さて俺は未知の領域へと踏み込む。
まるでキャンプの飯盒炊爨のような気持ちになる。楽しみで仕方がない。千切りにしたキャベツとカツを皿に盛り付けてワクワクしながら炊飯器の前でその時を待つ。
先に言っておくが、何かひっくり返るような面白いオチとかはない(笑)
ただ、美味かった。すげぇ、美味かった。今まで食った米で一番かもしれないくらい、美味かった。
思わずでかい声でうめぇ!っと唸ってしまった。
別に高級な米というわけでも無い。よく売られている普通の米。それが「熟成炊き」で75分待つことによって劇的に変わった。
もしかするとこれはこの米が本来持っている美味しさなのかもしれない。俺がいつも無駄に急かしている「早炊き」では決して味わえない味があった。
そんな風に考えていると、ふと俺は「ENDROLLEND」の活動がうまく進んでいないことと重なって思えてきた。
いま俺たち「ENDROLLEND」がやろうとしている音楽は、青春やえざくら、青春やえざくら×Da.Iから大きく変わっている。
そして、残念なことにそれは今の自分達の力ではまだ表現しきれない。俺も、すーさんも、まだまだ進化の、深化の、新化の途中だ。
正直、俺は色々焦っていた。
「青春やえざくら」の解散からもう1年。
その間、ENDROLLENDは曲として完成したものは2曲だけ。デモ状態のものが増えていくばかりで、そのどれもがまだ人に聞かせられる段階では無い。
俺達の時間は有限では無い。自分の身に何があるか、または家族の身に何があるかわからない。ましては時世はどうだ。明日の我が身を守れる保証はあるか。
そんな中進まない活動と、進みたい気持ちがひしめき合い俺は、いや、多分俺"たち"は焦っていた。
だけど俺たちが今やろうとしていることは、焦って、急いで表現できることではないように思う。
多分、俺がいつもする「早炊き」にようにすればきっと大切な何かが欠けるだろう。俺はそれをなんとなく感じている。
不確かに進む制作の中で一瞬、ひととき、確かに光る。雷光のような一瞬の光だけど、俺はそこにある力を感じている。そして、信じている。
俺たちの持っているものがどれほどのものかはわからない。常
だけど、今俺たちが地道に努力や練習を重ね続けることがあの「熟成炊き」のようになるならば俺は待てる。
だってよ、あの米はマジで美味かった。
うめぇ!って、いつかでかい声で叫ぼうぜ
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